不眠症・睡眠障害の原因

 不眠症はポピュラーなものであり、程度の軽いものなら、多くの人が経験しているかもしれません。でも日常生活に支障を来したり、非常に苦痛感が強くなってしまうことも時にはありますので、そのようなときにはあまり一人で悩みすぎずにご相談いただければと思います。

 不眠症の原因とは下では仮に7つに分けてみました。

①  もともと不眠症の傾向をお持ちの方がいらっしゃいます。「もともと」とはいつ頃からか、といいますと、たとえば小学生の頃から、あるいは小学低学年の頃からずっと、ということもあります。寝付きが悪い場合が多いようです。この場合には、何らかの神経過敏的な要素があるとか、不安が強くなりやすい、取り越し苦労しやすい、あるいは「むずむず足症候群」があるなど、種々の要因が考えられます。ただ、このいずれの原因であっても、やはりリラックスできない、安心できない、落ち着けないといった心理的傾向があろうかと思います。その背景を更にカウンセリングによってさかのぼることもできるでしょうが、すっかり成人してしまった後では、この原因について検討しようとすると、かなり遠い昔について思い起こしてみることにもなるでしょう。

 

② 逆に、もともとは普通に眠れていた、あるいは人一倍眠れていたという方が不眠傾向になることがあります。この場合には、やはりより明瞭なきっかけや背景があるのが一般的です。なんといっても、不安感を引き起こすものが原因になります。不安とは対象のない漠然としたものでもありますが、大抵は明日のことや将来のことなど未来に関する不安です。先のことは漠然としているからこそ不安にもなります。これについては、多くが仕事に関する不安、ちゃんと仕事をやり遂げることができるだろうか、あれはどうなっているだろうか、これはどうなっているだろうか、あるいは、そもそも明日はちゃんと目が覚めて起床できるのだろうか、なども含めて不安になってきます。大きな仕事を抱えているときには不安になりがちですし、仕事に問題を含んでいるとき、顧客対応に気をつけないといけないときなど、不安、緊張が高まるきっかけがあると睡眠がうまくいかなくなりやすいです。

 

③ もう一つ多く見られるのが、仕事に対する不安もさることながら、それ以上に、仕事が非常に忙しくて、休憩・小休止もそこそこで、朝から晩までほぼぶっ通しで就労して、残業も深夜近くまで、終電も少なからず、時にはタクシー帰宅、翌朝も早く起きて出社という場合です。こういうことが続いていると、通常帰宅すれば疲れてバタンキューで眠ってしまうものですが、そうではなくて、逆に目が冴えてしまって眠れなくなくなることがあります。こうなると、次第に疲労の蓄積のペースが速くなってしまうのではないか、やがては体力的に消耗するのではないかと心配され方もいます。

 

④ 対人関係での不調でも不眠傾向が生じることがあります。

 

⑤ うつ病には不眠症は非常に高い割合で発生します。ただし、うつ病の場合には不眠傾向ではなく過眠傾向(眠りすぎること)が発生することもあります。また過眠にともなって過食が生じることがあります。


⑥ 不眠症がきっかけになって、今日も眠れないのではないかと不安が強く、この不安の故に眠れないことがあります。床の中で目を閉じて、眠りの瞬間をじっと待ちわびて意識して、結局眠れず、煮詰まってきて、苦しみます。またこの眠れない苦しみがトラウマ(心の傷)になってしまった、眠るのが怖い、夜になるのが不安だ、ベッドに入るのも不安だいというふうにまで発展してしまうことがあります。これは不眠恐怖から不眠症が生じる、それがまた不眠を引き起こして極度に不安になるという悪循環が形成されていています。こういったことはかつて「神経症性不眠症」とも呼ばれていました。

 

⑦ 上で少し触れましたが「むずむず足症候群 restless legs syndromeがあります。夜間になると、とくに眠ろうとすると、足がムズムズする、足に熱間がある、などでじっとしていられなくて、眠れずに苦しむ場合があります。

 

これらの中で一番多い不眠症・睡眠障害の原因は。

 不眠症でご相談にいらっしゃる方の中で、②または③が一番多いと思われます。仕事関連のストレス・不安が一番多いです。

 ただ、それに対人関係、うつ病、神経症性不眠が、各人各様に応じて、合併していることも決して少なくありません。