
今年、双極性障害2型のうつ状態に効果があると厚生労働省が承認した治療薬「ビプレッソ徐放錠」が登場します。これは従来からあるクエチアピンと同じ成分です。ただ従来のものは作用時間が短いために、使いにくいところもありました。つまり、すぐに効果が切れてしまう、効果が一定になりにくい、1日3回内服を要するなどです。厚労省が日本のアステラス製薬に一定の効果が出るクエチアピンの「徐放錠」を開発するように要請して誕生したのがこのビプレッソです。徐放とはゆっくりと一定の効果が得られるというような意味です。1日1回の内服になります。
双極性障害2型の場合には、うつ状態が長引きやすく、波状になりやすく、再発もしやすいです。日常生活や就労に支障をきたすことも少なくありません。この治療には、抗うつ薬の効果があまり期待できず、専用の治療薬を内服することで効果が得られることが多いです。双極性障害2型は専用の治療薬の必要性が高いのです。しかし専用の治療薬の種類は少数です。そのうちどれが効果があるのか各人各様です。ですから、それに選択肢がまた一つ加わることはとても望ましいことです。このビプレッソは数日で効果が表れてくるのも期待できることの一つです。
作用メカニズムは、難しい話ですが、セロトニン受容体5-HT1Aに結合して部分活性作用(パーシャルアゴニスト)を表すのと、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害作用によりノルエピネフリンを増やして活性化します。つまりセロトニンとノルエピネフリンの二つに作用するということです。再取り込み阻害作用は、通常の抗うつ薬と同じようなメカニズムですが、セロトニン受容体に結合して活性化させるところが抗うつ薬と異なるところであり、これも治療の可能性を拡げるものになります。
食後に内服すると有効成分の血中濃度が2倍くらい高くなりすぎます。低脂肪、高脂肪など食事内容にかかわりなくそうなりますから食後2時間以上あけてから内服しなければなりません。通常は就寝前か終身1,2時間前がよいでしょう。また糖尿病である、あるいは糖尿病になったことがある人は内服できません。副作用としては、眠気です。古いクエチアピンでも眠気が生じることがありましたが、急に血中濃度が上がらないビプレッソの方がたぶん眠気は少ないと思われます。また10人に一人くらいに体重増加が見られます。