パニック障害について


パニック障害とは

 パニック障害とは、くり返し襲われる強い不安発作(パニック発作)によって生活に大きな支障をきたす病気です。パニック障害では、突然、何の前触れもなく、このままでは死ぬのではないかと思えるほど、心臓が破裂しそうな激しい動悸や胸が締め付けられるような不安発作に襲われます。この発作は突然始まり、急速にピークに達して、どんなに長くても1時間以内(多くは10分以内)に治まります。
 発作の時には“死の恐怖”の救急車で病院に駆けつけても、すでに発作が治まっていることも多く、心電図や呼吸機能などを検査しても異常はまったく見つかりません。医師からは「気のせいですよ」とか「ストレスのためですね」と言われて、そのまま帰される……。しかし、本人には依然として、めまい感や不安感が続いているような気がして、念のため……と耳鼻科や脳神経外科を訪れても何の異常も発見されない。

パニック発作の反復

 パニック発作は、反復して発生することがあります。

  このような“不安発作”がくり返し起こると、今度はいつ発作が起こるのかという不安や心配から、外出するのが怖くなって家に閉じこもりがちになり、ついには日常生活にも支障をきたすようになることがあります。あるいは1回パニック発作が発生しただけで、また発生するのではないかとひどく不安になります。これがパニック障害患者さんの典型的パターンです。



パニック障害の治療

 パニック障害の背景にはストレスや疲労があると考えられます。ストレスについての気づきも大切です。

 また、パニック障害には安定薬の効果も期待できます。内服薬を用いる場合には、それぞれ症状に合わせて最も適したものが選択されます。
 内服薬はたとえば3か月~1年の服用が必要だともされますが、実際にはケースバイケースですから、診療のなかで個々人に応じて検討されます。

 内服薬には発作止めの抗不安薬と予防と治療を兼ねたSSRIがあります。

心理療法

 パニック障害の患者さんでは、その3分の1から半数近くの人が場面恐怖を伴っていることが報告されています。 たとえば、一度エレベーターに閉じこめられて大変な思いをした経験をもつ人は、できることなら二度と乗りたくないという気持ちから、努めて階段を利用したがります。電車内で発作が生じたときには、電車を避けたくなります。このように、予想される危険から避ける行動のことを「回避行動」といいます。認知(行動)療法は、このような場面恐怖によって交通機関の利用、登校・出勤、買い物などが困難になった人たちから、その恐怖心を徐々に緩和することを目的としている心理学的治療法です。
 認知療法は、自分を取り巻く生活状況と身体感覚が、パニック発作とどのように関連しているのかを理解して、回避行動を克服(コントロール)するための具体的な方法を学ぶことを目的としています。
 まず不安に対する自分の心理状態の理解からに始めて、その後は回避行動を克服するために、具体的にどんな行動が必要なのかを学びます。さまざまなコントロール法の練習や、実際に不安が生じる現場での対処法として、暴露療法(エクスポージャー法)などを修得します。暴露療法(エクスポージャー法)とは不安を引き起こす場面に少しずつ段階的に身を曝しながら、慣らしていき、最終的には不安大幅に改善させる方向を目指すものです。
 また、典型的なパニック障害には心の奥深くの葛藤から発生するのではなく、心身のストレスや疲労が関連しています。しかし、時には心理的要因が大きく関わっているときがあり、この場合には精神分析などの心理療法という選択肢もあります。