上では、うつ病の症状は4つに分けられるとお話ししましたが、そのなかで、もっとも重要とされる症状、つまり基本症状が定められています。それは感情(気分)の障害です。ですからうつ病は、感情障害(=気分障害)の一つであるとされます。アメリカ流の精神医学では、感情(気分)の障害がなければ、ほかの症状(②から④)があったとしても、うつ病ではないというのが目安になっています。
・日内変動:朝が特に不調で午後から少しずつ改善して夕方に軽減するという現象はうつ病に特徴的です。
・希死念慮:死にたくなるという考えが生じることです。
うつ病になると、多くの場合、思考の活動性が低下します。医学ではこれを思考の「抑制」とか「制止」と名付けられています。これは、頭が働きにくくて、なかなか考えが前に進まない、仕事の能率がひどく落ちる、普段なら簡単に判断できるようなことでも判断が難しい、人の会話の筋がすぐにわからなくなる、本や書類を読んでも頭に入らないといったものです。思考のテンポは遅くなり、鈍くなり、機能の低下が目立ち、日常生活や社会生活に支障を来します。仕事が進みにくくなり、普段と比べれば20パーセントくらいに能率が落ちたという患者さんのお話も少なからずうかがいます。そのような状態にりますと、大抵の方がまずやることは、もっと頑張って取り組んで乗り越えようとします。無理を重ねてしまいがちです。いわば、アクセルを更に踏み込むことによって、この困難を乗り越えようとします。でもアクセルを踏み込んでも、遅々として進まず、テンポが遅いのです。
うつ病では、状況を悪い方にばかり解釈しがちで、自己評価についても極端に低く見積もりがちです。行き着くところは自分自身を丸ごと否定する、つまり自分は全部だめだ、という自己否定的な発想が生じやすくなります。状況も悪くなったのは、自分の責任だと感じます。このように思考のネガティブな発想が強くなります。
気分の沈みはネガティブ思考と密接に関係しています。気分の沈みとネガティブな発想は鶏と卵の関係で、ぐるぐると循環するようになってしまい、スパイラルに入って悪化します
・抗うつ薬は気分の沈みを改善します。それによってネガティブ思考を緩和することを目指します。
・認知療法はネガティブ思考を緩和することを目指します。それによって気分の沈みを緩和することを目指します。
・・・・・・以下続く(制作中)