注意欠損多動症(ADHD)について

 当院では、成人期のADHD, ADDの診断と治療を行っています。

 子供の頃から成人に至るまで、「不注意」、「ミス」、「忘れ物」、「約束が守れない」、「勉強など課題になかなか手がつけられない」、「整理が苦手」などが目立つ場合には注意欠如症(ADD)の可能性が考えられます。じっとしているのが苦手、落ち着かずあれこれ他のことをすぐに考えてしまうなどの多動傾向が伴う場合には注意欠損・多動性症(AD/HD)と呼ばれます。一般に、多動性よりも不注意が目立つ場合のほうが多いです。つまりAD/HDよりもADDのほうが多いです。

 当院では、ADHD, ADDを順序立てて診断しており、幾つかのアンケート形式のテストや心理テストを組み合わせて、多面的に検討をします。診断結果が出るのに2週間くらいかかりますが、典型的でない場合にはそれ以上お時間がかかる場合もあります。



ADHDの診療の流れ

 ADHDの診断は即日下すものではありません。多くの情報を集めたうえで診断基準に基づき、慎重に診断を検討いたします。当院では以下のような流れで診断を行っています。

 

初診時

 初回は社会生活や日常生活で支障をきたしていることについてお話をうかがいます。またアンケートや心理検査をご自宅で記入してください。質問の量も多くお時間がかかり、また子供のころを振り返っていただくところも多々あり、落ち着いた環境で記入してください。記入した用紙は、お渡しするレターパックにいれてポストに投函してください。

初診から2週間以上あけてご予約してください。

2回目受診時

 初診時にお話しされたこと、アンケート、心理検査をあわせて、事前に診断を慎重に検討いたしまして、その結果についてご説明をいたします。またADHDの理解にむけて話し合います。2回目受診時には特別予約枠(30分枠)をお勧めいたします。

3回目受診時

・ADHDについての理解と対応について話し合います。

・ADHDの治療薬のご説明をいたします(希望される場合)。

30分枠をお勧めいたします。

 

2回目3回目の特別予約枠(30分枠)につきまして

 担当医師と診断結果をもとにより広くより深く話し合うほうがよいので、2回目と3回目には30分の特別予約枠(完全予約制)をお勧めしております。理解を進めるうえでとても大切です。その後は通常枠でも構いません。

  特別予約枠のご予約は、受け付け窓口またはお電話で可能です。オンラインでは特別予約枠は出ていません。

なお、通常の保険診療の料金に加えて、特別予約料3500円が加算されて、合計で5000円前後が自己負担分になります。キャンセル料は3500円です。この料金設定は一般的な心理療法士によるカウンセリング料より低いくらいに設定されています。20歳未満では3500円分についても保険が適用されます。


注意欠損多動症(ADHD)の治療について

 ADHDはもともとの特性であるために完治を目指すのではありません。欠点を補いつつ、長所を伸ばしていくのが原則です。そのために、いろいろと工夫や試みをしていく事も大切です。長く根気強い取り組みが必要になります。

 また、必要性と希望に応じては内服薬による治療という選択肢もあります。内服によっていろいろな工夫や試みの成果が上がることを目指します。

ADHDの改善の方向に向けて

 ADHDにともなう自信の低下について:

  注意の障害のために、職場でミスをしたりすることが目立ち、物事を円滑に進めることに支障を来すことから、そのため叱責されたり、自信を喪失しがちになります。場合によってはうつ病になったり、人前で話すときに極度に緊張する社会不安障害になったりする事があります。そのような場合には、うつ病の治療、社会不安障害の治療も必要になることもありますが、大抵はADHDのほうをメインに治療したほうが全体が改善しやすいです。ADHDにうまく対処して、社会生活のペースがつかめるようになってくると、自信低下や気分の沈みも減ってきます。

 

得意分野を見いだしましょう:

 何かしら得意分野や才能をお持ちの方が少なくありません。得意分野を中心にして、それ以外のこともだんだんできることを増やしていくようなペースがつかめると大分よくなりやすいです。得意分野を見いだしましょう。できれば、得意分野で仕事を選択できるほうが望ましいです。職業適性検査を行うこともあります。

 

内服について:

 内服薬には、コンサータ、ストラテラ、インチュニブがあります。どの薬も注意力の持続、注意の配分のバランスの改善、ケアレスミスの軽減を目指すものですが、それぞれ作用メカニズムや効果や副作用に違いがあります。お薬についてのご説明をお聞きになって、そのうえでご自身が内服するか否かを決めていただきます。また、内服をご希望にならないでも、内服薬の説明だけを聞きたいと希望される方もいらっしゃいます。

 ストラテラは、もともと軽い抗うつ薬であり、朝の不調を改善したり意欲の低下も改善したりしながら、頭の中が整理される感じになり注意力が向上します。インチュニブは落ち着いて円滑に作業をすすめることができるようなタイプです。これらのお薬は毎日内服すると次第に効果が現れます。またコンサータという内服薬もあります。こちらは朝食後に内服して即効性があって12時間で効果がなくなり、必要な日だけ内服することもできるタイプです。コンサータは眠気が覚めて心身ともに動きやすくなり作業のパフォーマンスが上がるのが特徴です。

  

ADHDについての学習:

 ADHDについて、書籍を読んで学んでください。学ぶことでご自身の状態を理解できますし、過度に落ち込むことも減ります。苦手分野を補うためのいろいろな工夫やヒントも得られます。どれが役立つかどうかは、個々人でも異なりますので、いろいろ試みて、発見することを積み重ねましょう。

 ネット上にはいろいろな情報があふれていて気軽に見ることができますが、良いもの悪いものもが様々です。まずはADHDを専門に診ている先生が書いた標準的な内容の書籍を読むのがよいです。そのほうがネット上のいろいろな情報の善し悪しを判断しやすいです。こちらからも何冊か書籍をご紹介いたします。