うつ病と雨

 最近、長雨です。

 うつ病を患っている方には、天候が悪いと不調を訴える方が少なからずいらっしゃいます。アメリカの「ハミルトンうつ病評価尺度」にも天候によって気分が左右されるかどうかという1項目があるくらいです。曇天で、しとしと雨が降ったり、やんだり、どうもはっきりしないような、ぐずつくような天候の時に気分がすぐれなくなる方がいます。気圧の変動のせいなのか、それとも、なんとなく暗い雰囲気だからなのか、はっきりしたことはわかりません。雨はうつ病の気分の沈みにマッチするような雰囲気なのかもしれません。

 うつ病の認知療法にはポジティブ発想とネガティブ発想のバランスを改善するという考え方が基本です。気分が沈むときには、ネガティブな面とポジティブの面の両方を考えてみることが大切です。

 雨には風情があります。しとしと降る雨はしみじみとしています。ゴーゴーと雨が降ると、「降ってるなー!」という気持ちになってきます。

  江戸時代の浮世絵には雨が降るシーンが定番のようにしてでてきます。日本人は古くから雨の日に情緒を見出してきたのです。欧米の絵画には雨のシーンは少ないと思います。

 私はうつ病の患者さんに時々お話しすることもあるのですが、人生は晴れ、雨、曇りがあったほうがいい、と。心の中が晴れてばかりいる、ということはあり得ませんし、そんなことがあるとしたら、干上がってしまいます。

 

 蛇足ですが、日本は四季折々の変化が多彩で、雨の多さは、日本が水に大変恵まれていて、山にふった雨は、良質の湧水として数々の名水を生み出しています。雨は日本の豊かな自然と文化にもつながっています。私たちにとって、水は当たり前のようにありますが、世界ではこのように水に恵まれているところはあまりありません。中国の方たちは、日本の水源を買いあさっているとも聞きます。世界基準から考えても、日本の水の豊かさ、水のきれいさは、称賛されるべきものです。


 しかし、ときに自然は災害を引き起こすことがあります。雨の多さ故に、日本は世界の最高水準まで治水が整備されていますが、要注意です。