広野ゆいさん(ADHDについて)

 広野ゆいさんは「NPO法人 発達障害をもつ大人の会」の代表をされています。ご自身がADHDであり、長く苦労されてきました。うつ病の治療を12年間受けたあと、はじめてADHDの診断を得てADHDの治療をしたとのことです。

 広野ゆいさんが当事者として医療に寄せる思いについてお話を聴きました。

 ADHDをもっていると毎日それこそ24時間ずっと困っている、しかし何に困っているのか「困り感」をうまく説明しづらい、これまで失敗経験があまりに多くて、それについて話す怖さもあって、なかなか自発的には話しずらい。日常でも10分くらいは普通にできるがそれを持続できない、あるいは緊張していると普通にしているように見える、診察室でも普通にできるので、外見からはわかりにくい、ですからドクターや身近な人などからは、何に困っているのかわかってもらいにくく、「普通に見えますよ」「頑張れば克服できますよ」「皆も頑張っていますから」「どうしてできないの」などと言われたりするとのことでした。

 同会の統計によれば、医療機関でADHDの診断を受けた人の72パーセントが「ほっとした」と答え、65パーセントの人が「納得した」と答えています。

 広野さんご自身はADHDの診断に基づいて治療をして、「脳の疲れ」が軽減して余分なエネルギー消費が少なくなり、また体力も上がって、ADHDの理解に基づいていろいろな工夫や試みをたくさんできるようになり、症状やうつ状態などの二次症状などが改善されたとのことです。

 しかし広野さんは、世の中ではなおもADHDについての認知が低いことから、会の運営を通じて啓発運動をされています。ADHDをもっている当事者として広野さんは、苦労していることを共感してほしい、それによって信頼関係が築けると訴えていらっしゃいました。

 広野さんは、真面目ではきはきして明るい方です。

 私が外来診療で診ているADHDをもっている患者さん方も皆さん真面目な方ばかりです。しっかり仕事をしたいという意欲をもっていて、それだけに苦労もされていらっしゃいます。