双極スペクトラムとは

「双極スペクトラム」という言葉があります。この言葉はアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)や世界保健機構のICD-10には載っていません。双極性障害2型という考えたかを展開したアメリカのアキスカルという研究者などがこの「双極スペクトラム」という考え方を支持しています。

 「スペクトラム」とは白く透明な光をプリズムに通すと見えるいろいろな色です。7色とも言えます。ような虹の色のようなものです。そして、それぞれの色はグラデーションになっていて境界は不鮮明です。このような「スペクトラム」という考え方は有用でもあって、たとえば「自閉症スペクトラム障」「統合失調症スペクトラム」「強迫スペクトラム」があります。このうちDSM-5に公式に採用された用語はいまのところ「自閉症スペクトラム」だけです。

 「スペクトラム」は、その中身が、いろいろなタイプのものがありうる、そしてその境界が曖昧でもあるということです。それに加えて、その疾患の辺縁も曖昧で、山の頂上が典型だとすれば、中腹にあるものや、典型ではないがそれに近いもの、つまり裾野が大きく広がっている可能性もあります。その裾野の広がり具合が一体どれくらいなのかわかりづらいのです。

 「双極スペクトラム」は、ざっくりと言ってしまえば、気分の上がり下がりが生じやすい特性がある、つまり気分易変性が通常より大きいために、日常生活、社会生活、精神活動に何らかの支障をきたしているというような意味です。そしてこのスペクトラムの中身にはいろいろな色がある、つまりいろいろなタイプがあります。

 アキスカルは、双極性障害2型を提唱した功績が大きいです。さらに彼は「双極スペクトラム」を論じ、双極性障害2型をはじめとしてその他色々なタイプに分けて分類し命名しました。これが「双極スペクトラム」の中身だということになります。しかし、あまりに細かすぎて、ここでは触れないでおきます。

 スペクトラムの考え方はとても大切なのですが、そのデメリットとしては、グレーゾーンについて過剰診断に傾く可能性があるということでしょう。